2007年02月05日

王の男


 
映画「モリエール」を連想させる韓国映画の秀作だと私は思う。使用人の頃から一緒だった、二人の芸人の男の友愛の物語。虐げられ、食べるものも与えられずに働かされて、暴力にも耐えてきた、芸人は、美しい女性のような相手役を守るため、逃げ出し、都会に行く。そこで、王の噂話をお芝居にして民衆を笑わせるが、王の重鎮に捕らえられる。芸人は、「王を笑わしてみせましょう。」と言う。重鎮は、「笑わすことが出来なければ、死罪だ。」と。芸人達は、見事王を笑わせる事に成功し、王は彼らを宮殿の中に置いた。王は、美しい芸人を呼び寄せて遊び相手に。重鎮は彼らを宮中に呼んだのには、王に芝居を見せる事で、先代の王をしのぐ名君になってもらいたかったのだが、王のご乱行はますますひどくなる。芝居仕立てで、王の母親殺しのいきさつが暴かれると、血染めの復讐劇に。王への抗議文を書いて町に貼った、命知らずの芸人は、目を焼かれて盲目に。
「召使の頃、主人の金の指輪が紛失して、誰も白状するものがいなかったので、自分が名乗り出ると、棒を押し込まれ口が熱くなった。その時、目が熱くなっていたら、今度は口が熱くなっていただろう。」と独り言を言う芸人の話を泣きながら相方は聞いている。
王の傍で、指人形を見せながら、相方は自分の手首を切り、自殺しようとした。やがて、重鎮達の反乱が起こり、宮中に兵が
集まる頃、綱渡りの糸に立つ盲目の芸人と、それを見つめる相方。王は、彼の芸を楽しむ。自分の死を予感してるのか、していないのか。
「金の指輪を盗んだのは私、なんて命知らずの男なの。」とつぶやく。
綱渡りをしながら、芸人は言う。
「生まれ変わったら、何になりたいと聞かれたら、王様にも、金持ちにもなりたくない。生まれ変わったも芸人になりたい。」
相棒は、私も、と同じせりふを繰り返す。彼も綱の上に飛び上がっていく。

人間本来の自由な生き方を貫いた、芸人の姿と、時代劇の豪華な美しさ、芸の圧倒されるような見事さ。
「モリエール」の中で、大道芸を見る子供の頃のモリエールに、おじいさんが言う。
「見ること、見ることが楽しいんだよ。良く見ておきなさい。」
中性な立場で、世の中の真実を見る事が出来るのは、精神的に束縛されることのない自由な人間。そういう人間の代表的な存在として
「芸人」がいる。そして、その芸人は、人々を笑いの渦に巻き込む事で、人々に幸せを運んでくる。一瞬であっても、一瞬という永遠の時間を。  

Posted by アッチャン at 03:05Comments(0)映画