2007年08月31日

幸運な一日



 今回はサンフランシスコに延着して着いたので、乗り継ぎ便の10時40分発のニューヨーク行きには当然間に合わなかったわけだが、私は最初から、サンフランシスコでは入国に時間がかかるので、余裕を持って、12時45分発の便にしていた。サンフランシスコで、入国を待つ間、間に合うかといらいらするのがいやだから。その上、どうしてなのか、サンフランシスコでは、よくスムーズに通してくれないことがあるのです。
 ところが、今回は違っていた。誰もいなくて、私は二番目、審査も問題なく、そこを通り、荷物をピックアップするのも、最初に私の荷物はでていて、あっという間に、国内線に。飛行機から降りて、10分くらいしかかからなかった。
 
サンフランシスコの上空から
JFKに着いた時にも、荷物はすぐに出ていて、早々と外に出た。息子が、車で迎えに来てくれるというメールが入っていた。いつもはアパートまで一人で行くのにめずらしい。週末にメーンに行くので、車を週単位で借りたのだろうか。
 外に出て待っていると、向こうの方で、呼ぶ声がする。黒の小型車の中に息子の顔が見えた。
 シエアーの車を借りてきたという。一時間10ドルで、ガソリンも保険も込み。20ドルで、空港を往復して返せるので、地下鉄を使うよりも安い。時間もお金も節約できて、これは便利。彼のアパートから20分ほど歩いた所に何台か常備してあり、用途に合わさせて大小の車を選べる。今日はイギリスのローバーという車だった。
 
息子の持てなし料理

アパートに着き、荷物を部屋に置いてから、車を返しに行った。外は暑く、人々は半袖で歩いている。バーや、レストランのテラスに沢山人が集まっていた。ビールを一杯飲んで帰ろうかと、気を遣ってくれたけれど、飛行機の中で、随分ワインを飲んだので、今夜は断った。
 
 お花のプレゼント

アパートに帰ると、ばらの花束が置いてある。咲きかけの見事な大輪のバラが、白い陶器の壺に。
 息子のガールフレンドから、私へのプレゼント、手紙が添えてあった。私のブログを読んでくださっているのは知っていて、コメントをいただいてとても嬉しく思っていた方からの、思いがけないプレゼント。朝、集中豪雨で、タクシーを呼んでもつながらなかったのでびしょぬれを覚悟していたのに、、出るときには、嘘のように雨がやんでいた。30日は父の月命日、父のお陰かなと思いながら関空に着くと、満席だからとビジネス席にアップグレードしてもらっていた。

 関空ーサンフランシスコ間の機内食


日本を出てから、今日はずっとラッキーに、スムーズに、快適に、息子のアパートまで到着できた上に、素敵なバラの花束までいただいて、こんなに幸運で素晴らしい一日って、今までに初めてじゃないかしら。本当にありがとうございます。
  

Posted by アッチャン at 16:33Comments(0)ニューヨークにて

2007年08月20日

ヒロシマ、ナガサキ


ヒロシマ、ナガサキ
金曜日の朝、「ヒロシマ、ナガサキ」を観に行った。映画館が、朝一回だけの上映なので、早めに行ったら、映画が始まっても空席があった。アメリカが25年間、公開しなかったフィルムが、この映画の中に入れられている。映画は、原爆の事実と、その後遺症を、被爆者の当時と今の姿、証言者としての言葉、原爆地獄絵、残された貴重なフィルムで、淡々と表現されている。
 解釈を赦さないほど、この映画は、原爆の絶対悪の真実を表現している。場内で忍びなく声が、聞こえてきたけれど、あまりの酷さ、証言する人達の痛みの深さに、涙が出る余裕もなかった。被爆の影響は、3世代まで及ぶという。
 現在、世界中に、ヒロシマ、ナガサキに使われた、原爆の10万個分が存在している。
世界中の学校で、テレビで、この「ヒロシマ、ナガサキ」を観なければならない。原爆の現実を知らなければならない。
 映画館を出て、まばゆい太陽の下に出た。お昼時、お腹が空いているはずなのに、食べることが出来なかった。けれど、人間の愚かさと悲しさ、時間が経つと、食べ物が頭をよぎる。忘れて、食事が出来るようになる。
 戦後62年間、その後遺症で、苦しみ続けている人達がいるというのに、、、。
  

Posted by アッチャン at 00:52Comments(0)映画

2007年08月13日

ビルマの竪琴

  

 日本映画チャンネルで、市川監督の「ビルマの竪琴」を放映している。黒白の1956年公開作品とと、
1985年のカラーのリメイク映画を、2本同時に、放映しているのを見ると、
以前に思っていた感覚とは違った。
56年の白黒作品の印象が強かっただけに、リメイクの映画に馴染めなかったけれど、
今回改めて見比べると、2作目の方が良いと評価できる。
水島役の、安井昌治は、肉付きが良すぎて健康そのもの、中井喜一の方が、遙かに適役だ。
指揮官を演じている、三国蓮太郎と、石坂浩二を比べても、軍配は石坂に。
三国の方は、冷静沈着、せりふも淡々としているが、石坂は、人道的で暖かい人柄が
にじみ出ていて、せりふにも、人間的な暖かさに満ちている。
言葉の一つ一つをとても大切にし、その場に一番ふさわしい語り口で、涙を誘う。
一方、水島役の中井喜一は、ほとんどせりふがなく、身体で表現する役所を、
スリムで日に焼けた身体で、ひょうきんで身軽な人間から、苦悩し、修行僧になり、
仏陀のような顔つきになっていく過程の演技が、完璧だ。
 ビルマの戦死者の魂を象徴する赤いルビー、ビルマの赤い大地の色、カラーで撮りたいという
市川監督、この映画を大切にし、もう一度完璧な形に撮り直したかった想いが伝わってくる。

 テーマソング「埴生の宿」は私の好きな歌、イギリス兵に取り囲まれて、日本兵達が戦闘の身支度をしながら歌うこの歌に、イギリス兵達が故郷を思いながら、埴生の宿を合唱するシーンがある。「戦場のメリークリスマス」という映画で、大島渚監督は、このシーンから着想したのではないか、と思われた。

 
   

Posted by アッチャン at 17:23Comments(0)映画

2007年08月03日

藤沢周平と「かくも長き不在」



 父は時代小説が好きで、本を読まない日はなかった。
生前、最後まで読んでいたのは、藤沢周平
だった。父の本棚には、父がカバーにお世辞にも上手いとは言えない字で、丁寧に題名を書いた
本が山のように残っている。
私は、映画「たそがれ清べい」を見てから、藤沢周平に興味を持つようになったが、まだ本には
手を出していない。最近、NHKテレビ18チャンネルで、「清左衛門、残語録」を再放送していて、
遅まきながら、毎週楽しみに観ていた。来週の火曜日が最終回だ。
藤沢周平の視点は、武士の意地を通すよりも、命を大切にして生きることの方が大切だ、日々の
生活の中に幸せがあるという事。けれども、友との信頼関係、友情の為なら命を投げ出して死をも
いとわない。藤沢の小説の中に男女間の思慕に、なんともいえない色気があるが、
それは押し隠した、一歩が踏み出さない男女の恋。心が切なく、熱く描かれている。
藤沢周平が平成9年に亡くなって、文藝春秋の臨時創刊が出た。私は父の書棚を開いて、
ビニールのカバーをした雑誌を見つけた。平成9年には、もうすでに父は他界している。
母が父を偲んで買い、丁寧にカバーをかけたものだった。私は、母がマンションに夜までいる間、
手持ち無沙汰で、なにか読むものは無いかと探していたのだ。
 ページを開くと、小説やエッセイ、藤沢周平を偲んで、対談なども掲載され、娘さんの手記が
あった。
それによると、藤沢周平は、映画が好きで、廃盤になっている映画のビデオが、
どこかにあれば見つけてほしいと娘さんに頼んでいたらしい。
そのビデオは、マルグリット、デュラスが、脚本を手がけ、アンリ、コルビが監督をした「かくも長き不在」という映画だった。私の好きな映画であり、特別の意味を持つ作品でもあった。
 私は嬉しくなった。藤沢周平という人物に親しみを抱いた。不思議だと思った。
 その本の藤沢周平のエッセイの中に、映画に関する文章がある。彼は随分映画を見たという。
アメリカの西部劇映画は、藤沢の時代小説に似ていると書いている。多分、ジョンウェインの映画を言っているのだろう。実らぬ、口にはだせない愛、男の友情の為に死んでいく、確かに、と思う。
父もまた、無類の映画好きだった。私は小さい頃から、週に何度も、父について映画館に行った。




「かくも長き不在」は、戦争に行ったまま、帰らない夫を待ち続ける、カフェの女主人が、
記憶を無くした浮浪者がセビリアの理髪師の歌を口ずさんで歩く姿をみた途端に失神する。
浮浪者を戦争に行ったまま帰らなかった夫だと思いこみ、彼の行動を追い、彼を食事に招待し、
好物の食事とチーズを用意して、一緒に踊ったダンスの曲をかけて、踊る。彼に記憶をなんとか取り戻してもらおうとすると努力するが、彼は記憶を失ったまま、ダンスしながら愛撫する彼女の手が
後頭部にある弾丸で出来た窪みの穴に触れる。
家を出た浮浪者に、トラックのライトが当たり、怯えた浮浪者は、逃げてどこかに行ってしまう。
いつかきっと夫は帰ってくる。彼女は待ち続ける。




 絶望の中にいて、ただ待ち続けることで、辛うじて生きる希望を支えている。
「かくも長き不在」は、戦争の惨さ、愛の深さ、狂気に至るまでのヒューマニズム、
永遠に待ち続ける事をテーマにしている。サムエル、ベケットの「ゴドーを待ちながら」という小説が
あるが、そこにも、来るあてのない人(ゴッド)を待ち続ける二人の会話がある。

 この映画の音楽が素晴らしく切ない。フランス映画の秀作だと思う。

   

Posted by アッチャン at 13:11Comments(0)映画