2013年08月11日

母を思う

  

 部屋に必ず鍵をかけていた母が
 鍵をかけなくなった
 大きな音をたてなくても
 すっと入れるので私は助かるのだけど
 鍵をかけなくなった母も心配だ
 最近は、うっかり鍵をかけていることも
 忘れて、戸が開けようとする

 それでも、私が一人で暮らしていることは
 明瞭な頭の中で覚えていて
 行くたびに そわそわと忙しそうに頭をメグらし
 私をこの部屋に匿う方法はないものかと
 ここに寝ていれば良いのよ
 ベッドの布団を開いて、靴を脱ぎ、
 ベッドのへりに横たわってスペースを取る
 寝て御覧なさい。一緒に寝られるから

 怖いわ
 何がそんなに怖いの
 なんでも、恐ろしいことになるわ
 何が怖いのだろうか
 バイクに追突されたこと?
 引ったくりで頭を打つつけたこと?
 エスカレーターで押されて転倒したこと?
 昔の記憶が、母を怖がらせるのだろうか

 頭を打ったことが、認知症の原因かも
 医者は言った。
 
 母の部屋に入ると、母の調子が読み取れる
 元気な時と、身体の調子が良くない時と
 それでも母は いつも笑うことを忘れない
 もういよいよだめだわ、と言う時
 私は、母の脈を診る
 すごい不整脈で、手は熱を帯びたように熱い
 痛いところない?しんどくない?
母は、あえぐような調子で
「どこもしんどくないよ。痛いところはないよ。」
母は元気なところを見せようとするのか、
いつもの歌を歌いだす
呼吸が乱れた、時折声が折れて 歌ってみせる
母はきっと、昨日元気だったのに、今日お別れ
というように 
笑い顔だけを残して、行くのではないかしら
私は急に寂しくなって
辛さが数倍にもなるだろうと
母の死の時に思いをはせる


Posted by アッチャン at 10:09│Comments(0)
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