2007年03月25日
オペラ座で歌舞伎
オペラガルニエでの歌舞伎公演の初日の券を買ったので、その日は、オペラ座に出かける時間までどこにも行かなかった。事故にでもあって、歌舞伎が見られなくなっては大変だから、慎重にして近くの買い物だけにした。7時に着くと、オペラ座には、着物姿の女性も多く、着飾った人がほとんどだった。男性は、タキシードに白い小さな花をつけている人をよく見かける。カメラが、有名人の取材をしている。その中に、日本のTBSテレビのニュースキャスター、筑紫哲也さんの姿も。
TBSの専属カメラが、筑紫さんの歩く姿を追っている。テレビで見るよりも、ずっとハンサムでダンディー、それにずっと若く見える。磯村さんがトイレに行く姿が見えた。小さくてせかせかした歩き方の人だ。
フランスのテレビは、フランスの著名人にインタビューしているのだろう。女優のような感じの人、作家風の人など、順次、止められてはインタビューに応じている。
ドイツから来ているはずの友人を探していたら、見つかった。若い女の子と一緒に、二階のバルコニーにいた。開演時間も迫ってきて、ちょっとだけ話をして、それぞれの席についた。
オーストラ席は、著名人らしい人が多いようだ。私のすぐ後ろに、筑紫さんの席があった。一段上がったオーケストラ席には、森前総理が座っている。その二つ席ほど先に養老剛志の姿も見える。歌舞伎の大好きな小泉さんの姿はない。どこかで見た顔の人が多いが、名前までは知らない人。
天井には、シャガールの円形状の絵がある。
最初の題目は「勧進帳」だった。
勧進帳は、花道がなければ、とうてい演じきることは不可能だ。工夫はしているものの、全くナンセンス。花道から、関所にやってきて、まだ関所は遠くに見えるあたりで、重要な場面が数々演じられるはずなのに、それが舞台の上だけで行わなければならないのだから距離感が全くなく、二つの違った場面を演出することが出来ずに、本当に気の毒だ。最後に、弁慶が、踊りながら義経達が無事に関所を通って、遠ざかって行く姿を確かめてから、足を振り上げて、花道を舞いながら豪快に通り抜けて去っていく場面は、勧進帳の中で、最も重要なのに、それが死んでしまっている。花道をどうして作らなかったのか、とても残念だ。団十郎の演技は抑えた、それでいて豪快な演技が光っていたが、それを受ける海老蔵の富樫は、フリがおおげさで、漫画的、公正で品格ある、情にもろい富樫とは程遠い乾燥した感じがした。
幕間には、森前首相がぶらぶらして、知り合いの人と話をしている。やはり大物の政治家は、堂々としていて他の人と違う。オーラが出ている。
口上では、全員がフランス語で挨拶していた。フランス語の翻訳が上に掲示されているので、長々とフランス語で挨拶するよりも、日本語の方が美しく聞こえたのではないだろうか。最後ににらみを披露、9番目の席にいた私には、にらみが見えなかったので、ほとんどの人はオペラグラスがなければ見えないだろう。
亀次郎が大いに沸かせていた。オペラ座の怪人が好きなので、ここで演じることが出来てとても嬉しい。皆さん、シャンデリアには気をつけて、とユーモアのある挨拶をしていた。
最後の題目は「紅葉狩り」、幕が開くと、舞台は鮮やかに紅葉が満開で、華やかな歌舞伎の舞台を彷彿とさせる。観客は目を見張ったに違いない。常磐津は、人間国宝の方が出ていて、その声が素晴らしかった。市川海老蔵が、女形を演じているが、女形の声が良くない。その上、形が硬く、
違和感があって、良くなかった。妖怪に変化すると、巨大な怪物に化するが、まるで動物のよう。
あくまでも色気を残して、歌舞伎らしさを出してほしかった。他の役者の方が、軽やかに、形良く舞い、特に亀次郎の踊りは、若いのに見事だった。
「勧進帳」では、片岡仁左衛門の弁慶、菊五郎の富樫、今は坂田藤十郎を襲名している、その当時の中村鴈次郎の舞台は、素晴らしいものだった。思い出せば、涙が出てくるほど、情感溢れた弁慶を演じた。私は2回、仁左衛門の弁慶を観てるが、まだ首相にはなっていなかった、小泉純一郎が、仁左衛門の弁慶演じる「勧進帳」を観る為に大阪に来ていて、すぐ後ろに席だった。豪快な力強い拍手をしながら、ううん、素晴らしい、と感嘆している声を後ろに聞いていた。
Posted by アッチャン at 04:56│Comments(0)
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